鉄・アルミニウム・銅などの金属は、建物や自動車、機械、電気製品など、私たちの暮らしや産業を支える重要な素材です。日本では、これらの金属の生産量はどのように変化しているのでしょうか。鉄鋼業と非鉄金属製造業の生産量について、実際にデータを見て、考えて、解釈してみましょう!

この記事では、経済産業省が公開する【生産動態統計】データを見ながら、日本の金属工業について確認します!
- Q:日本の金属工業で、一年間の製造出荷額は何兆円? (※個人経営を除く)
- 54.5兆円
- 「鉄鋼業」23.8兆円(44%)
- 「非鉄金属製造業」13.3兆円(24%)
- 「金属製品製造業」17.4兆円(32%)
- 54.5兆円
- Q:日本の鉄鋼業で、一年間の「粗鋼」の生産量は何万t?
- 8070万t
- 「普通鋼」6250万t
- 「特殊鋼」1820万t
- 8070万t
- Q:日本のアルミニウム地金の生産量は何万t?
- 一次地金:0t (完全輸入)
- 二次地金:14万t
- 二次合金地金:114万t
- Q:日本の銅の生産量は何万t?
- 粗銅:194万t
- 電気銅:157万t
※データは 経済構造実態調査[2023年]・生産動態統計[2024年, 2025年]より。
概観:金属工業の経済規模
日本の標準産業分類では、「鉄鋼業」「非鉄金属製造業」「金属製品製造業」の三つが、金属や金属製品の産業に該当します。この記事では三つをまとめて「金属工業」と呼ぶことにします!
- 鉄鋼業:鉱石・鉄くずなどから、鉄や鋼をつくる産業
- 非鉄金属製造業:銅・アルミニウムなど、鉄以外の金属をつくる産業
- 金属製品製造業:鉄や非鉄金属を材料に、缶・刃物などの金属製品をつくる産業
日本の金属工業は、どのくらいの経済規模を持つでしょうか? 経済構造実態調査1のデータを使って、確認してみましょう!
以下の数表(単位は兆円)は、金属工業の「原材料費」「製造出荷額」「付加価値額」を集計したものです。「付加価値額」=「製造出荷額」-「原材料費」と考えてください。(※厳密には異なります2)
| 産業 | 分類 | 2000年 | 2010年 | 2020年 | 2021年 | 2022年 | 2023年 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 鉄鋼業 | 原材料費 | 6.8 | 13.5 | 14.0 | 15.3 | 19.0 | 19.0 |
| 製造出荷額 | 11.9 | 18.1 | 17.7 | 19.7 | 23.9 | 23.8 | |
| 付加価値額 | 4.2 | 3.6 | 3.0 | 4.1 | 4.6 | 4.0 | |
| 非鉄金属製造業 | 原材料費 | 4.0 | 6.5 | 7.1 | 8.8 | 10.1 | 10.2 |
| 製造出荷額 | 6.2 | 8.9 | 9.6 | 12.0 | 13.4 | 13.3 | |
| 付加価値額 | 1.9 | 2.2 | 2.1 | 2.9 | 3.0 | 2.6 | |
| 金属製品製造業 | 原材料費 | 7.6 | 6.8 | 8.9 | 8.8 | 9.8 | 10.0 |
| 製造出荷額 | 15.1 | 12.3 | 16.0 | 15.9 | 16.9 | 17.4 | |
| 付加価値額 | 6.8 | 4.9 | 6.2 | 6.2 | 6.3 | 6.5 | |
| 金属工業(計) | 原材料費 | 18.4 | 26.8 | 30.0 | 32.9 | 38.9 | 39.2 |
| 製造出荷額 | 33.3 | 39.3 | 43.3 | 47.6 | 54.2 | 54.5 | |
| 付加価値額 | 12.9 | 10.6 | 11.4 | 13.3 | 13.8 | 13.1 |
金属工業は2000年以降、製造出荷額が大きく増加しています。しかし原材料費も上昇しているため、付加価値額は横ばいになっています。
2023年データでは、日本の「金属工業」製造出荷額は 54.5兆円 、そのうち「鉄鋼業」が 23.8兆円 、「非鉄金属製造業」が 13.3兆円 、「金属製品製造業」が 17.4兆円 でした。
一方で、「金属工業」付加価値額は 13.1兆円 、そのうち「鉄鋼業」が 4.0兆円 、「非鉄金属製造業」が 2.6兆円 、「金属製品製造業」が 6.5兆円 でした。


製造品出荷額では鉄鋼業が全体の44%を占めて最大ですが、付加価値額では金属製品製造業が全体の49%を占めて最大です。
鉄鋼業は経済規模が大きいものの、「原材料に対してどれくらい付加価値を与えたか」という観点では、金属製品製造業が上回ります。金属製品製造業では、金属をさらに加工してワイヤーやアルミ缶などの製品をつくるため、より高い付加価値・利益を生み出しやすいといえます。
日本の鉄鋼業:生産データを確認!
鉄鋼の製造工程
鉄や鋼を生産する産業を鉄鋼業と呼びます。日本では明治時代以降、近代工業を発展させるうえで鉄鋼の生産が重視され、1901年には官営八幡製鉄所の操業が始まりました。現在、日本の鉄鋼業は、日本製鉄・JFEスチール・神戸製鋼所などの大手企業によって支えられています。鉄は私たちの生活に欠かせない素材であり、自動車、建物、橋、鉄道、機械など、さまざまな製品や社会インフラに使われています。
鉄鋼業のデータを見る前に、どのように鉄や鋼がつくられるのか、簡単に確認しましょう!3


鉄鋼業では、鉄鉱石・コークス・石灰石などを高炉で加熱し、銑鉄(せんてつ)4と呼ばれる鉄を作り出します。コークスとは石炭を加熱してつくられる燃料で、鉄鉱石から酸素を取り除く役割を持ちます。
銑鉄は炭素を多く含むため、硬い一方でもろく、そのまま利用するには適しません。そのため、転炉で少量の鉄スクラップとともに加熱することで炭素を除き、粘り強く丈夫な鋼(はがね)をつくります(転炉法)。また、鉄スクラップを主な原料として、電気炉で鋼をつくる方法もあります(電炉法)。さらに近年では、鉄鉱石を高炉で溶かすのではなく、天然ガスや水素などを使って酸素を取り除き、直接還元鉄をつくる直接還元法も注目されています。直接還元鉄は電気炉で溶かされ、鋼の原料になります。
つくられた鋼は圧延加工を経て、鋼板・鋼管・形鋼・棒鋼・線材などの鋼材(こうざい)に加工され、自動車・建物・機械など、様々な用途に使用されます。使用後の鉄製品はスクラップとして回収され、再び鉄鋼生産の原料に活用されます。



鉄鋼メーカーは、電炉法や直接還元法を利用することで、環境負荷の少ないGXスチールの生産を目指しています。
日本製鉄とJFEスチールが持つ高炉の場所5を、地図で確認してみましょう!


日本の高炉・製鉄所は、太平洋ベルト沿いの臨海部に集中していることが分かりますね。鉄鉱石や石炭などの原料を船で輸入するため、港に近い臨海部に製鉄所が集まるわけです!
鉄鋼業の生産量【生産動態統計】
銑鉄・粗鋼
銑鉄と粗鋼の生産量データを確認してみましょう!6 鋼にも色々な種類がありますが、「粗鋼」はそれらをまとめた呼び方です。 ※銑鉄の生産量データは2021年より非公開のため、データはありません。


銑鉄は粗鋼の原材料なので、同じタイミングで銑鉄・粗鋼の生産量は増減していますね。
2025年のデータでは、粗鋼の生産量は 8070万t でした。粗鋼の生産量は2007年に1億2000万tでピークを迎え、それ以降は減少が続いています。
転炉・電気炉
コークスが鉄鉱石を還元するとき、多くの二酸化炭素が排出されます。そのため、銑鉄を利用した鋼の生産は環境への負担が大きく、代わりに電炉法などの手法で製鋼することが求められています。
転炉・電気炉それぞれ、どのくらいの粗鋼を生産しているのか、データで確認してみましょう!7


日本の粗鋼生産は転炉法が中心で、電炉法の利用割合は4分の1程度だと分かります!
2010年以降、粗鋼の生産が全体的に縮小していく中で、電気炉による生産量は横ばいで推移しています。一方、転炉法による生産量は減少傾向にあるため、近年の「電気炉」利用率はやや上昇傾向にあります。
普通鋼・特殊鋼
鋼は「普通鋼」と「特殊鋼」の二種類に分かれます。
「特殊鋼」は、普通鋼よりも多くの元素を加えたり、熱処理を行ったりして、強度・硬度・耐熱性・耐食性などを高めた鋼です。自動車部品や工具、航空宇宙分野など、素材に高性能が求められる場面で使われます。8


粗鋼の生産全体のうち、特殊鋼の占める割合は4分の1程度だと分かります!
2010年以降、粗鋼の生産は全体的に縮小していますが、特殊鋼の生産量は横ばいで推移しており、全体のうち「特殊鋼」が占める割合は上昇傾向です。これは、日本の鉄鋼業において、高機能・高付加価値な鋼材の重要性が高まっていることを示しています。
特殊鋼は、自動車部品や機械部品、工具など、強度や耐久性が求められる分野で使われるため、粗鋼全体の生産が縮小する中でも、安定した需要を保っていると考えられそうです!
日本の非鉄金属製造業:生産データを確認!
工業では、鉄や鋼の他にも、様々な金属を製造しています。日本では特に、アルミニウム・銅・鉛・亜鉛の生産が大事です!
- アルミニウム
- 軽くてさびにくい。
- 利用用途:アルミ缶・アルミサッシ
- 銅
- 電気・熱をよく通す。
- 利用用途:電線
- 鉛
- 重くて柔らかい。放射線を遮る性質がある。
- 利用用途:バッテリー(蓄電池)・放射線遮蔽材
- 亜鉛
- 融点が低く、加工しやすい。
- 利用用途:金属メッキ・ダイカスト製品



他にも金・銀・レアメタルなど、様々な金属が生産されています!
アルミニウム
アルミニウムの生産は、新規アルミニウム(新地金)と、再生アルミニウム(二次地金)の二つのパターンがあります!9 アルミニウムはリサイクルがしやすい金属です。
新規アルミニウムの生産は、ボーキサイトと呼ばれる鉱石からアルミナ(酸化アルミニウム)を取り出し、さらにアルミナを大量の電気で精錬することで、新地金を生産します。
再生アルミニウムの生産は、使用済みのアルミニウムスクラップを回収して、再生工場で精錬することで再生地金を生産します。


アルミニウム地金は、純アルミ系の地金と、用途に応じて成分を調整した「合金地金」に分かれます。合金地金は、アルミニウムにシリコン、銅、マグネシウムなどを加えて性質を調整したもので、合金地金の多くが鋳物・ダイカスト用に利用されます。
日本のアルミニウム生産は、ほとんどが再生地金(二次地金)です。ボーキサイトから精錬する新地金は、日本では(ほぼ)行われていません。





電気料金の高い日本では、アルミニウム新地金(一次地金)は生産されず、輸入に頼っています!
アルミニウム二次地金と、アルミニウム二次合金地金の生産量データを比較してみましょう。


二次地金・合金地金の両方とも、直近の10年はほぼ同じ水準で安定しています。
2024年データでは、アルミニウム二次地金の生産量は 14万t 、二次合金地金の生産量は 114万t でした。
銅
銅は電機や熱の伝導率が高く、安価なうえに加工もしやすいです。そのため、電線や伸銅品(板・棒など)などに利用されます。
銅の生産は、原材料である銅鉱石を製錬炉や転炉で高温処理し、不純物を取り除くことで粗銅をつくります。その後、粗銅を電解精製によって高純度化し、電気銅を生産します10。


粗銅・電気銅の生産量データを確認してみましょう!


粗銅・電気銅どちらとも生産量は安定して横ばいです。2024年データでは、粗銅の生産量が 194万t 、電気銅の生産量が 157万t でした。
銅製品のデータ(伸銅品・電線)も確認してみます!


銅そのものの生産量は横ばいで推移する一方、銅製品の生産量は減少傾向でした!
電気銅は国内で加工されるだけでなく、地金として海外輸出もされます。そのため、国内で銅製品の生産量が落ちたとしても、海外需要に合わせて生産量が変化しなかったのだと考えられそうです。
鉛・亜鉛
最後に、鉛と亜鉛の生産量データも確認してみましょう!
鉛は自動車のバッテリーや、放射線の遮蔽材に利用されます。亜鉛は、鉄を錆びにくくするための金属メッキの素材として利用されます。


鉛の生産量は横ばいで安定する一方、亜鉛の生産量は減少傾向です。2024年データでは、電気鉛の生産量は 19万t 、亜鉛の生産量は 47万t でした。
鉛の生産量が安定している背景には、主な用途が鉛蓄電池に集中していることが考えられます。鉛蓄電池は自動車用バッテリーや非常用電源、産業用電源などに使われており、交換需要が継続的に発生します。
一方で、亜鉛は金属メッキに利用される金属ですから、建設や機械など、亜鉛メッキを多く使用する産業の国内生産が縮小すると、亜鉛の需要も減少しやすくなります。日本では建設需要の伸び悩みなどにより、国内の亜鉛需要が弱まっていると考えられます。
工業生産なら、生産動態統計を確認しよう!
この記事では、日本の金属工業(鉄鋼業・非鉄金属製造業)を確認するために、経済産業省から公開されている【生産動態統計】データを利用しました。
生産動態統計は、国内の工業製品について、生産・出荷・在庫などの動向を把握するための統計です。鉄鋼業や非鉄金属製造業についても、粗鋼、鋼材、銅、鉛、亜鉛、アルミニウムなど、さまざまな品目の生産量が月次で公表されています。日本を根底から支える基礎データ、基幹統計の一つでもあります。
金属工業だけでなく、機械工業・化学工業など、生産動態統計は製造にかかわる非常に幅広いデータを公開しています!
工業製品の製造量を調べるときは、生産動態統計を活用しましょう!
脚注
- 正確には次のデータです:工業統計調査(従業員数4人以上)[2000, 2010, 2020]、経済構造実態調査[2024年]。※経済構造実態調査は「サービス産業動向調査」「商業統計調査」「特定サービス産業実態調査」「工業統計調査」の4つの統計を統合・再編したものです。また、経済構造実態調査では、個人営業の事業所は除くので注意してください。つまり、2021年以降のデータは個人営業の事業所を除いた数値となります。 ↩︎
- 「付加価値額」について、従業者29人以下は粗付加価値額で計算。 ↩︎
- 鉄鋼製造プロセスの説明は、こちらの資料を参考に作成しています。:経済産業省『鉄鋼業を取り巻く状況について』令和6年、日本鉄鋼連盟『鉄をつくる』『主な鋼材の形状別分類』 ↩︎
- 銑鉄の用途は大きく二つあり、①鋼を作るために利用(製鋼用鉄)されるか、②溶かして型に流し込み鋳物に利用(鋳物用鉄)されます。2017年の生産動態統計における銑鉄生産量は、製鋼用鉄が7800万t、鋳物用鉄が32万tでした。そのため、銑鉄はほとんどが製鋼に利用されると言えます。 ↩︎
- 参照:日本製鉄・JFEスチール。 ↩︎
- 金属工業の生産動態統計は次のデータを参照しています:2001-2005年・2006-2010年(鉄鋼・非鉄金属)・2011-2015年・2016-2020年・2021-2025年 ↩︎
- 2011年以降は鋼塊のみ集計対象。 ↩︎
- 参考:普通鋼と特殊鋼 特徴と用途の違い – 金属加工のワンポイント講座|メタルスピード ↩︎
- アルミニウム製造プロセスの説明は、こちらの資料を参考に作成しています。:日本アルミニウム協会『アルミニウムのできるまで』 ↩︎
- 銅の製造プロセスの説明は、こちらの資料を参考に作成しています。:JOGMEC『銅のマテリアルフロー』 ↩︎