私たちは労働を通して得たお金で、日々の生活を営んでいます。「働き方改革とは言うけれど、本当に労働時間は減っているのか?」「世の中の給料って伸びているの?」こうした疑問に答えるためにも、客観的な情報の把握は欠かせません。労働環境の変化を捉えるために、実際にデータを見て、考えて、解釈してみましょう!

この記事では、厚生労働省が公開する【毎月勤労統計】データを見ながら、日本人の賃金と労働時間について確認します!
- Q:一年の出勤日数、平均は何日?
- 一般労働者:233日
- パートタイム労働者:165日
- Q:一日の労働時間、平均は何時間?
- 一般労働者:8.4時間 (年間1947時間)
- パートタイム労働者:5.8時間 (年間962時間)
- Q:日本人の平均年収は何万円?
- 一般労働者:543万円
- パートタイム労働者:134万円
※データは 毎月勤労統計[2024年]より。
労働時間・賃金の推移
私たちの働き方には、フルタイム勤務や短時間勤務など、さまざまな形があります。それぞれの働き方には特徴があり、労働時間や賃金水準に違いを生みます。
毎月勤労統計では、こうした働き方の違いをふまえて、労働者を「一般労働者」と「パートタイム労働者」の二うに分けて集計しています。
- 一般労働者:フルタイムで勤務する労働者のこと。いわゆる「正社員」とだいたい同じ意味です。
- パートタイム労働者:一日の労働時間が一般労働者よりも短い人、または一週間の労働日数が一般労働者よりも少ない人。
年間の出勤日数・一日あたり労働時間の推移
まずは年間の出勤日数と、一日あたりの労働時間を時系列で確認してみましょう!




一般労働者・パートタイム労働者どちらも、年間出勤日数はずっと減少傾向だと分かります。1990年以降の週休二日制の普及や、有給休暇の取得促進などで出勤日数が減っているのでしょう。2024年の平均出勤日数はそれぞれ、一般労働者が 233日 、パートタイム労働者が 165日 でした。
一方で、一日あたりの労働時間は増加傾向にあります。勤務日数は減っているものの、仕事の量まで同じように減っているわけではないため、一日あたりの労働時間は長くなっていると考えられます。この30年で、電子機器など便利な道具が普及し、働き方の効率化は進みました。しかしその一方で少子高齢化が進み、人手不足は深刻になっています。結果として、1人あたりの業務量はそれほど減っていないようです。2024年の平均労働時間(出勤日あたり)はそれぞれ、一般労働者が 8.4時間 、パートタイム労働者が 5.8時間 でした。
「出勤日数」×「出勤日あたり労働時間」で、年間の労働時間を算出できます。実際に確認してみると、一般労働者・パートタイム労働者の両方とも、年間の総労働時間は減少傾向だと分かります。特にパートタイム労働者の労働時間は大きく減っていますね!


賃金の推移・賃金指数の確認
年間の労働時間は減少傾向だと確認できました。それでは、年間の賃金……いわゆる「年収」はどうでしょうか? 年間給与の推移を、一般労働者・パートタイム労働者それぞれで確認してみます!




一般労働者の場合、2000年代はやや減少傾向・2010年代からは増加傾向です。パートタイム労働者の場合、わずかながら増加傾向が続いています。
注目したいのは、一般労働者・パートタイム労働者の両方とも、2021年から年間給与は急上昇している点です。
年収が上がっているということは、人々の生活は豊かになったと言えるでしょうか? ……そうとは限りません。なぜなら、この期間は物価も上がっているからです。もらえるお金(給与)が増えていても、そのお金で買えるものまで増えているとは限りません。
「もらえるお金」と「そのお金でどれくらい物が買えるか(生活の豊かさ)」を区別するために、「名目賃金」と「実質賃金」の違いを確認しましょう。
- 名目賃金:給与の額そのもののこと。物価の変化を考慮しない。
- 実質賃金:物価の変化をふまえて考えた賃金のこと。
- 賃金指数:賃金がどれくらい増えたか・減ったかを表した数値のこと。
- 名目賃金指数:名目賃金で計算した賃金指数。
- 実質賃金指数:実質賃金で計算した賃金指数。
賃金指数は「ある年を基準として、それの何倍に増えたか・減ったか」で表します。
例えば去年の年間給与が300万円で、今年はその1.1倍の330万円になったとします。去年の金額を基準とする場合、名目賃金指数は 去年が1.0、今年が1.1 となります。
一方で、去年から今年で物価が1.1倍になった場合を考えて見ると、この場合は名目賃金が1.1倍になったものの、物価もまた1.1倍になっており、同じだけ上がっています。このとき、実質賃金指数は 去年が1.0、今年が1.0となります。(1.0 = 1.1 / 1.1 で計算1)
例えば300万円の物品を購入しようとしたとき、去年は年収が300万円ですから1個買えます。今年は物価が1.1倍になったので、この物品は330万円の価格になっており、今年の年収は330万円ですから、1個買えることが分かります。名目賃金は1.1倍になったものの、買える物品の個数は去年が1個・今年も1個ですから、買える個数は変わっていませんよね。実質賃金が去年は1.0・今年も1.0というのは、このように生活の豊かさが変わっていない状況を表しています。
実際に、名目賃金指数と実質賃金指数の推移を確認してみましょう!(※指数は2020年を基準とします)23




名目賃金は上昇傾向である一方、実質賃金は2010年代から減少傾向とわかりました。
特に最近では、コロナ禍や戦争によって全世界的に物価上昇(インフレ)が進んでおり、2021年から賃金が急上昇しているものの、実質賃金は上がるどころか下がっていることが確認できます。(※ただし、2024年のパートタイム労働者では実質賃金が回復しています)
私たちの給与は上がっているものの、それは物価上昇のスピードに追い付いておらず、日常生活は段々と貧しくなっていると言えます。
産業別の労働データ
「労働時間」や「賃金」などの労働条件は、働く会社や業界によって大きく異なります。
毎月勤労統計では日本全国の企業を16の産業に分類4し、それぞれの産業ごとに労働データを公開しています。
産業ごとの労働データを確認し、比較してみましょう!
パートタイム労働者の割合:産業別
産業ごとに、パートタイム労働者の割合を確認してみましょう。


パートタイム労働者の割合は「宿泊業・飲食サービス業」がダントツで高く、80%に迫ります。例えば居酒屋やレストランが該当します。他には「生活関連サービス業・娯楽業」や「卸売業・小売業」も40%~50%と、高い割合ですね。
例えば、「宿泊業・飲食サービス業」はレストランなど。「生活関連サービス業・娯楽業」はクリーニング店や映画館など。「卸売業・小売業」はコンビニエンスストアが該当します。



学生アルバイトの方が多いイメージですね。
パートタイム労働者の割合が大きいということは、その産業では人手を柔軟に配置する必要が大きく、フルタイム中心では回りにくい仕事の構造になっているということです。営業時間の長さや繁閑の差に合わせて働き手を確保する必要があり、働く側にとっても家庭や学業などと両立しやすい形が求められていると考えられます。
逆にパートタイム労働者の割合が低い産業は、「建設業」や「情報通信業」などが該当します。高度な専門知識や経験が求められる仕事は簡単に働き手が見つからないため、柔軟な人材配置が難しく、結果として一般労働者(=働く時間が長い・固定されている)が多くなると考えられます。
毎月の平均労働時間:産業別
それぞれの産業ごとに、毎月の平均労働時間を確認してみましょう!


棒グラフを注意深く見ると、面白い法則に気がつきます! 例えば「宿泊業・飲食サービス業」ではパートタイム労働者の労働時間は他の産業よりも低いのに、一般労働者の労働時間は他の産業よりも高いです。逆に「金融業・保険業」はパートタイム労働者の労働時間が長く、一般労働者の労働時間は低いです。
横軸に一般労働者・縦軸にパートタイム労働者で、労働時間の散布図を確認してみます。


多くの産業で、一般労働者の労働時間が長いほど、パートタイム労働者の労働時間は短いことが分かりました! 逆に、パートタイム労働者の労働時間が長いほど、一般労働者の労働時間は短いです。
パートタイム労働者の働きに頼るほど、一般労働者の業務時間は短くなる……と考えられるでしょうか。色々な解釈ができそうですね。
ただし例外的に、「運輸業・郵便業」は一般労働者・パートタイム労働者の両方とも労働時間が長く、「教育・学習支援業」はどちらも労働時間が短いです。
毎月の平均給与:産業別
それぞれの産業ごとに、毎月の平均給与を確認してみましょう!(※ボーナスを含めた平均給与です)


「電気・ガス・熱供給・水道業」や「金融業・保険業」の給与は高いことが分かりますね。
こちらも労働時間と同じく、散布図で一般労働者・パートタイム労働者を比較してみましょう!


一般労働者の給与が高いほど、パートタイム労働者の給与も高いことが分かります!
業務を通して生み出された売上・利益は、一般労働者・パートタイム労働者の両方に支払われるため、どちらの給与も比例関係にあると考えられます。



一般労働者・パートタイム労働者では、労働時間は反比例の関係・給与は比例の関係にあります!
労働時間・賃金の変化を見るなら【毎月勤労統計】を確認しよう!
日本の労働時間や賃金の変化は、厚生労働省の統計データ【毎月勤労統計】で確認できます。
毎月勤労統計は、全国の事業所を対象に、賃金・労働時間・雇用の変動を毎月調べている統計です。日本の働き方や給与の動きを継続的に把握できる、労働分野の代表的な統計の一つとなっています。日本を根底から支える基礎データ、基幹統計の一つでもあります。
労働に関する公的統計には、就業者数や失業率を把握するもの、賃金水準を詳しく確認するものなど、さまざまな統計があります。その中で毎月勤労統計は、「今、賃金は増えているのか」「労働時間は増減しているのか」といった月ごとの変化を追いやすい点が特長です。
労働時間や賃金の変化を詳しく知りたいなら、毎月勤労統計を活用しましょう!