日本の漁業と養殖業:魚介類の生産と輸出入の推移【海面漁業生産統計】

私たちの食卓に並ぶ魚や貝、エビなどの魚介類は、日々の食生活に欠かせない身近な存在です。国内の生産は漁業と養殖業のどちらが中心なのか、生産や輸出入がどう変化してきたのか。魚介類をめぐる状況を整理し、実際にデータを見て、考えて、解釈してみましょう!

この記事では、農林水産省が公開する【海面漁業生産統計】【食料需給表】データを見ながら、魚介類の生産量・輸出入量ついて確認します!

Question → Answer】
  • Q:漁獲量は、漁業と養殖業のどちらが大きい?(※海面漁業)
    • 漁業の方が大きい。
    • 海面漁業:293万t   海面養殖業:85万t
  • Q:魚介類の食料自給率は? (※重量ベース)
    • 52%
  • Q:魚介類の国内生産量・輸入量・輸出量は?
    • 国内生産量:342万t
    • 輸入量:372万t
    • 輸出量:59万t

※データは 海面漁業生産統計[2023年]より。

目次

漁業・養殖業の漁獲量

水産物の生産方法には、いくつか種類が存在します。海で魚をとる漁業もあれば、いけすなどで育てて生産する養殖業もあり、その形はさまざまです。

また、海で行われるものと、川や湖などで行われるものでも、統計の分け方は異なります。こうした違いをふまえて、海面漁業生産統計では漁業や養殖業の生産量データをまとめています1

用語チェック
  • 漁業:魚介類や海藻を、自然から採ること
    • 海面漁業海で行う漁業
    • 内水面漁業川や湖などで行う漁業
  • 養殖業:水産物を育てて、収穫すること
    • 海面養殖業海で行う養殖業
    • 内水面養殖業川や湖などで行う養殖業

海で行うのは「海面」、川などで行うのは「内水面」ですね。

まずは1年間で、どのぐらい魚介類が生産されるのか確認してみましょう!

2023年のデータでは、海面漁業が 293万t 、海面養殖業が 85万t でした。非常に多くの水産物が、海から採集・収穫されていることが分かります! 一方で、内水面漁業は 2万1千t 、内水面養殖業は 3万t と、海面と比較して内水面の生産規模は極めて小さいです。

海面・内水面を合計して、2023年日本の漁獲量は 383万t でした2

漁獲量の推移

海面の漁獲量が、時代によってどう推移しているか見てみましょう!

海面漁業を「遠洋漁業」「沖合漁業」「沿岸漁業」の三つに分け、「海面養殖業」と一緒に確認します。

用語チェック
  • 遠洋漁業:陸から遠い海で行う漁業
    • 太平洋・大西洋・インド洋など。
  • 沖合漁業:沿岸から少し離れた海で行う漁業
    • 日本から2、3日で帰れる距離。
  • 沿岸漁業:海岸に近い場所で行う漁業
    • その町の海。地域の特産魚が採れる。

どの生産方法も、近年は漁獲量が下がっていることが分かります。地球温暖化による不漁や、漁業従事者の減少、そもそも日本人の「魚離れ・肉食化」による需要の減少などが、漁獲量低下の理由として考えられます。

2023年データでは「沖合漁業」が 180万t 、「沿岸漁業」が 87万t 、「養殖業」が 85万t 、「遠洋漁業」が 25万t でした。

昔は「遠洋漁業」の収穫量が多かったものの、1970年以降は減少が続いています。日本では1977年に200海里(約370㎞)を「漁業水域」として独自に設定したほか、世界的には「海洋法に関する国際連合条約」が1982年に採択され、「排他的経済水域」という概念が明文化されました。こういった影響もあり、日本から遠く離れた海で漁業が行いにくくなった結果、遠洋漁業が縮小したと考えられます。

1990年以降、「沖合漁業」の漁獲量が急減していることも確認できます。大量に獲れていたマイワシ(イワシの一種)の漁獲量が減少したことにより、「沖合漁業」全体の漁獲量も減ってしまいました。3

「遠洋漁業」「沖合漁業」の漁獲量が減少の一途をたどる一方で、「養殖業」の生産量は2000年頃まで増えていたことが分かります。現在では、養殖はメジャーな生産方法の一つとなり、「沿岸漁業」と同じくらいの生産量を誇ります。

魚介類の自給率・輸入量・輸出量の推移

市場に出回る魚介類は、日本産のものと外国産のものがありますね。例えばタコはモーリタニア産、サーモンはノルウェー産・チリ産のものが有名です。

一般的に、食材の「国内供給量」は「国内の生産量」+「海外からの輸入量」-「海外への輸出量」となります。国内供給量のうち、日本産が占める割合を食料自給率と呼びます。

用語チェック
  • 食料自給率4:国内で供給される食材のうち、何%が日本で生産されたものかを表す
    • 単に「自給率」と呼ぶことも多い。

先ほど、魚介類の生産量が減少していることを確認しましたが、輸入量はどうでしょうか? 食料需給表のデータを確認してみます!

1990年ごろ、魚介類の国内生産量が急減するのに合わせて、海外からの輸入量が増えていることが分かります! ただし輸入量が増えたとはいえ、生産量・輸入量の合計(供給量)は1990年以降、減少傾向にあります。日本人の魚離れ・肉食化が進み、そもそも魚介類に対する需要が減っていることが背景にあります。

2023年データでは、魚介類は国内生産量が 342万t 、海外輸入量が 372万t 、自給率は 52% でした56。魚介類の自給率は2000年ごろまで低下し、それ以降は50%前後で安定しています。

輸入量ではなく、輸出量はどうでしょうか? 魚介類の輸出量について、食料自給表データで確認してみます。

1990年までは国内生産量が上昇傾向なので、それに合わせて輸出量も増えていました。1990年ごろの漁獲量の急減に合わせ、輸出量も大きく落ち込んでいることが確認できます。

近年は魚介類の輸出量は増加傾向にあり、2023年データでは輸出量は 59万t でした。主にホタテガイやブリが輸出されています。

海産物の貿易についてもっと知りたい方は、
水産白書を読んでみるのがオススメです!

魚介の種類別:海面漁業の漁獲量データ

魚介類全体の生産量や輸入・輸出量のデータを確認しました。次はそれぞれの海産物ごとに、生産量データを確認してみましょう!

※ 海面漁業のデータです。養殖業を含まないことに注意してください。

魚介類の生産量を比較!

まず最初に、それぞれの魚介類ごとに、2023年の漁獲量を棒グラフで比較してみます! ただし、イワシ・貝類は生産量がとても大きいので、別のグラフに表します。

2023年の海面漁業では、イワシ類が 94万t 、貝類が 35万t の漁獲量で、他の魚介類よりも圧倒的に多くの量が生産されています!

イワシ・貝類のほかには、サバ・カツオ・タラ・マグロ・アジは、生産量が10万tを超える海産物です。

魚介類2023年の生産量 [海面漁業]
いわし類94万 4800 t
貝類36万 4100 t
さば類26万 9600 t
かつお類20万 6400 t
たら類17万 7500 t
まぐろ類14万 5000 t
あじ類11万 2300 t
ぶり類8万 7200 t
さけ・ます類6万 3000 t
いか類4万 8700 t
ひらめ・かれい類3万 8200 t
ほっけ3万 1700 t
さんま2万 5800 t
たい類2万 3300 t
たこ類2万 2800 t
かに類2万 2700 t
にしん1万 8400 t
えび類1万 2000 t

マグロ、カツオ

マグロ、カツオの生産量について、データをチェックしてみましょう。

2023年の海面漁業データでは、マグロの生産量は 14万t 、カツオの生産量は 21万t でした。

1970年頃まではマグロの生産量の方がカツオより多かった様子ですが、1990年頃から逆転し、現在ではカツオ漁獲量の方がマグロ漁獲量よりも多い状況です。7

サケ・マス、アジ、サバ、ブリ、サンマ

サケ・マスと、アジ、サバ、ブリ、サンマの生産量について、データをチェックしてみます。

2023年の海面漁業データでは、サバの生産量が 27万t 、アジの生産量が 11万t 、ブリの生産量が 9万t 、サケ・マスの生産量が 6万t 、サンマの生産量が 3万t でした。

サバは、イワシ・貝類に次いで3番目に国内生産の多い魚介類で、1978年には160万tを超えるほどの量が採れています。1980年頃からは生産量が減少傾向であるものの、今でも多くの漁獲量を誇る海産物と言えます。

サンマの漁獲量は、この10~20年間で急減していることも分かります。もともと20万~30万tは毎年採れていた魚ですが、現在の漁獲量は10分の1程度まで減ってしまいました。

イワシ

イワシの生産量について、データをチェックしてみましょう。

2023年の海面漁業データでは、イワシの生産量は 94万t でした。

なんと、1980年代後半のイワシ漁獲量は480万tを超えます! 2023年データの94万tですら他の魚介類と比べて圧倒的に漁獲量が大きいことを考えると、とんでもない大きさです。イワシの漁獲量は1990年代に一気に減って100万tを切りますが、これは海水温の変化(レジームシフト)が原因と言われています。

2010年以降の漁獲量は回復傾向なことも分かりますね。ここ数年は100万t近くのイワシが採れています。

エビ、カニ、タコ

エビ、カニ、タコの生産量について、データをチェックしてみます。

2023年の海面漁業データでは、タコ・カニの生産量がどちらも 2万t 、エビの生産量が 1万t でした。魚と比べると、エビ・カニ・タコの生産量は低いですね。

エビ・カニ・タコの漁獲量はずっと減少傾向です。1970年頃はそれぞれ5万t以上の漁獲量がありましたが、現在は3万tを切ります。なぜ漁獲量が減っているのか明確な理由は分かっていませんが、①地球温暖化の影響 ②漁業関係者の高齢化・労働力の減少 ③海産物需要の減少 などが考えられそうです。

イカ

イカの生産量について、データをチェックしてみましょう。

2023年の海面漁業データでは、イカの生産量は 5万t でした。

イカの漁獲量は2000年頃まで非常に大きく、60万tほどありました。しかし2000年以降は凄まじいスピードで落ちており、2018年には10万tを切っています! 現在では5万tほどですから、全盛期のたった10分の1程度まで落ちてしまいました。

イカやサンマの漁獲量が減少しているのは、海水温の上昇が大きな理由の一つとして考えられています。8

地球温暖化の影響はこんなところにも出ています!

魚介類の生産データなら【海面漁業生産統計】を確認しよう!

日本の魚介類に関する生産データは、農林水産省の統計データ【海面漁業生産統計】で確認できます。

海面漁業生産統計は、毎年、海面における漁業生産の状況を調べ、漁業種類別・魚種別の漁獲量や、養殖による収獲量などを把握している統計です。日本を根底から支える基礎データ、基幹統計の一つでもあります。

海面漁業生産統計では、全国値だけでなく、都道府県別のデータを確認できます。日本全体の傾向を見るだけでなく、どの地域でどの魚介類が多く生産されているのかをあわせて読み解く際にも役立ちます。

魚介類の生産状況を詳しく知りたいなら、海面漁業生産統計を活用しましょう!

  1. 詳細な定義はこちらをご覧ください。リンク ↩︎
  2. この数値は海藻の生産量も含みます。 ↩︎
  3. マイワシの漁獲量の大きな変動については、海水温等が数十年間隔で急激に変化するレジームシフトによるものであるとする説が有力となっています。<『令和元年度 水産白書』より引用> ↩︎
  4. 例えば「重量ベース」の自給率であれば、食材の重さを使って計算した自給率となります。「カロリーベース」であれば、一日の消費カロリーのうち何%が日本の生産で賄えるかを表した自給率となります。 ↩︎
  5. 食料自給率の計算方法はこちらをご覧ください。リンク ↩︎
  6. 海面漁業生産統計では2023年の漁獲量合計は383万tで、海藻を含みます。食料需給表における魚介類の生産量とはデータの定義が異なるため、数値は一致しません。 ↩︎
  7. 農林水産物輸出入統計の値を確認すると、マグロの自給率が約50%・カツオの自給率が約85%です。マグロの供給は海外輸入品に頼る面が大きく、国内生産が需要に追い付けていません。 ↩︎
  8. 参考:『令和6年度 水産白書↩︎
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