日本は石油・鉄鉱石などの資源に乏しい一方で、海外から原材料や燃料を輸入・加工して輸出する「加工貿易」が得意です。高度経済成長期には、臨海部を中心に工業が発展し、日本は世界有数の経済大国へと成長しました。現在も製造業は日本経済を支える重要な産業ですが、全盛期に比べると勢いは落ち着いています。工業の発展や現在の状況について、実際にデータを見て、考えて、解釈してみましょう!

この記事では、経済産業省が公開する【鉱工業指数】【経済構造実態調査】データを見ながら、日本の工業の全体像を確認します!
- Q:製造業で働く人は、日本全国で何人いる? (※個人経営を除く)
- 773万人
- Q:日本の工業全体で、一年間の製造出荷額は何兆円? (※個人経営を除く)
- 373兆円
- 金属工業:15%(55兆円)
- 機械工業:46%(170兆円)
- 化学工業:14%(50兆円)
- 食料品工業:12%(44兆円)
- その他:14%(54兆円)
- 373兆円
- Q:製造業全体の製造出荷額のうち、三大工業地帯が占める割合は何%?
- 36%
- 京浜工業地帯:7%(27兆円)
- 中京工業地帯:19%(70兆円)
- 阪神工業地帯:10%(38兆円)
- 36%
※データは2023年。複数の統計を参照。詳細はこちら1。
日本の鉱工業指数・経済規模
地域別のデータを見る前に、日本全体の工業データを確認します!
日本の工業生産量:鉱工業指数
日本の工業では、自動車・鉄鋼・化学製品・食品など、様々な種類の製品が作られています。それぞれの製品は単位も価格も異なるため、「日本全体でどれくらい工業製品が作られているのか」をそのまま比べるのは簡単ではありません。
そこで使われるのが、鉱工業指数です。鉱工業指数は、工業製品の生産量の動きを指数化したもので、日本の工業生産が増えているのか、減っているのかを確認するために使われます2。
- 鉱工業指数:鉱工業製品の生産・出荷などの動きを、基準年と比べて指数で表したもの。現在は2020年を「100」として算出。(経済産業省リンク)
実際にデータを確認してみましょう! ※金額は考慮されず、生産量のみ考慮されるので注意してください。


1955年頃から鉱工業指数は伸び続けたものの、1990年頃から成長がストップしています。ゆっくりですが、2000年に入ってから日本の工業生産量は減少していることも分かります!
第二次世界大戦の直後、日本政府は経済復興のために、傾斜生産方式と呼ばれる経済政策をとりました。石炭・鉄鋼・電力などの基幹産業に資金が集中し、日本の製造業は一気に回復していきます。
1950年から朝鮮戦争が起こり、日本は武器の輸出などによって好景気に見舞われました(朝鮮特需)。ドルを稼いだので、このタイミングでアメリカから最新の機械を輸入し、製造力を向上&重工業が発展しました。これによって日本は長期間の経済成長につながり、1955年から1973年まで高度経済成長が起こります!
高度経済成長の後も、日本の工業生産はしばらく成長を続けました。しかし、1985年頃から円高が進んだり、貿易摩擦も目立つようになると、日本製品を海外へ輸出することが難しくなっていきます。こうした状況を受けて、企業は人件費の安い海外へ生産拠点を移すようになりました。その結果、1990年頃に日本の工業生産は成長が止まり、国内で生産される工業製品はだんだんと減っていきました(産業の空洞化)。



鉱工業指数の変化は、日本の経済成長の歴史と連動しています!
日本の工業生産が1990年代からストップした一方、発展途上国は成長を続けています。特に中国の経済成長は目覚ましく、現在では「世界の工場」と呼ばれるくらい工業生産量は大きくなりました。
具体例として、自動車の生産台数3を見てみます。


日本・アメリカ・ドイツなどの主要国が横ばいで推移する一方、中国の自動車生産量は2000年以降、急速に伸びていることが分かります。電気自動車(EV)の生産でも中国が世界をリードしていて、自動車業界において大きな影響力を持つ国になっています。
産業別:製造業の出荷額の変化
鉱工業指数は、生産量(個数・台数など)の動きをもとにした指標であり、製品の金額は反映されていません。そこで次に、日本の製造業全体でどのくらいの製造品出荷額があるのかを確認してみましょう。
製造業は、「繊維工業」「鉄鋼業」など、標準産業分類によって細かく分けられています。ただし、そのままでは分類が多く、全体像をつかみにくいため、この記事では製造業を「金属工業」「機械工業」「化学工業」「食料品工業」「その他の工業」の5つに整理して見ていきます!



政府が定めた公式の分類とは異なるので、少し注意です!
- 製造業の種類
- 金属工業:鉄やアルミなどの金属や、金属製品を作る工業。
- 機械工業:車や電車などの輸送機械、冷蔵庫などの家電など、機械を作る様々な工業。
- 化学工業:エチレンなどの石油製品や、硫酸などの化学製品を作る工業。
- 食料品工業:パン・お菓子・牛乳・缶詰など、加工食品を作る工業。
- その他:繊維工業や印刷業など。
産業ごとの製造出荷額の変化を、数表で確認してみます。(単位は兆円)
| 分類 | 2000年 | 2010年 | 2020年 | 2021年 | 2022年 | 2023年 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 金属工業 | 33 | 39 | 43 | 48 | 54 | 55 |
| 機械工業 | 138 | 129 | 147 | 147 | 160 | 170 |
| 化学工業 | 33 | 41 | 43 | 46 | 53 | 51 |
| 食料品工業 | 35 | 34 | 39 | 40 | 42 | 44 |
| その他 | 61 | 46 | 50 | 50 | 53 | 54 |
| 製造業計 | 300 | 289 | 323 | 330 | 362 | 373 |
2023年データでは、日本の製造出荷額は 373兆円 でした。2000年以降は生産量がだんだんと減っているものの、製品価格の変化・インフレの影響もあり、近年の製造出荷額は増加傾向にあります。
2023年の製造出荷額を円グラフで表してみましょう。


全体のほぼ半分を機械工業(46%)が占めています。自動車・電子機械などは、日本が得意とする分野ですね。
一方で、金属工業は15%、化学工業は13%、食料品工業は12%、その他の工業は14%となっており、機械工業以外の分野もバランスよく一定の規模を持っています。日本の製造業は機械工業を中心としつつも、金属・化学・食品など幅広い産業によって支えられているといえます。
産業別:製造業の従業員数の変化
製造業の製造出荷額は300兆円~400兆円でしたが、従業員数はどのくらいでしょうか。同じく数表で確認してみます。(単位は万人)
| 分類 | 2000年 | 2010年 | 2020年 | 2021年 | 2022年 | 2023年 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 金属工業 | 110 | 94 | 98 | 98 | 97 | 97 |
| 機械工業 | 364 | 318 | 326 | 327 | 329 | 329 |
| 化学工業 | 39 | 37 | 41 | 42 | 42 | 43 |
| 食料品工業 | 124 | 122 | 124 | 121 | 123 | 123 |
| その他 | 281 | 195 | 183 | 184 | 183 | 182 |
| 製造業計 | 918 | 766 | 772 | 771 | 775 | 773 |
2023年データでは、日本の製造業従事者は 773万人 でした4。
2000年には918万人だったため、長期的には製造業で働く人の数が減少していることが分かります。背景には、工業生産量そのものの減少に加えて、生産現場の機械化・自動化が進み、以前ほど多くの人手を必要としなくなっていることもあると考えられます。
産業別の内訳を円グラフで見てみましょう!


従業員数に占める割合は、機械工業が43%と最も大きく、製造業で働く人の多くが機械工業に集中しています。製造品出荷額でも機械工業は46%を占めるため、日本の製造業は金額面でも雇用面でも、機械工業の存在感が大きいといえます。
化学工業は従業員数では5%にとどまるものの、製造品出荷額は13%を占めています。比較的少ない人数で大きな出荷額を生み出していることから、設備や技術による生産効率の高い産業だと考えられますね。反対に、「その他の工業」は、出荷額に比べて従業員数の割合が高くなっています。出荷額14%に対して従業員数が24%であり、多くの人手に支えられている産業といえそうです。
2023年データでは、一人あたりの製造出荷額は、金属工業が 5600万円/人、機械工業が 5200万円/人、化学工業が1億1800万円/人、食料品工業が3600万円/人、その他の工業が 3000万円/人でした。「その他の工業」について、標準産業分類ごとに、一人あたりの製造出荷額を表で確認してみましょう。
| 「その他の工業」詳細分類 | 従業者一人あたりの製造出荷額(百万円)[2023] |
|---|---|
| 繊維工業 | 17.5 |
| 木材・木製品製造業(家具を除く) | 37.4 |
| 家具・装備品製造業 | 22.6 |
| パルプ・紙・紙加工品製造業 | 44.5 |
| 印刷・同関連業 | 20.8 |
| プラスチック製品製造業(別掲を除く) | 30.1 |
| ゴム製品製造業 | 34.3 |
| なめし革・同製品・毛皮製造業 | 17.6 |
| 窯業・土石製品製造業 | 35.5 |
| その他(上記以外) | 29.5 |



「その他の工業」の中でも、「繊維工業」「印刷業」「革製品製造業」などは、従業員一人あたりの製造出荷額が小さく、多くの人手を必要とします!
日本の工業地帯:地域別の工業
地域別の工業データを確認していきます。
日本は石油・石炭・鉄鉱石などの資源に乏しく、工業製品を製造するためには、原材料や燃料を海外から輸入する必要があります。そのため、工場は港に近い場所にあるほうが便利です。原材料や燃料を運び込みやすく、完成した製品も出荷しやすいからです。
1960年、日本政府は「所得倍増計画」を打ち出し、経済成長を進めるために、道路・港湾・工業用地などの整備を勧めました。日本の工業は、京浜・中京・阪神の三大工業地帯を中心に発展し、他にも新しい工業地域が広がっていきました。関東から東海、近畿、瀬戸内、北九州にかけて工業地域が帯状に広がる地域を太平洋ベルトと呼びます。
- 工業地帯・工業地域:工場が集まり、工業生産が盛んな地域のこと。
- 三大工業地帯:工業地帯のうち、規模が大きい 京浜工業地帯・中京工業地帯・阪神工業地帯 のこと。
- 太平洋ベルト:関東から東海、近畿、瀬戸内、北九州にかけて、太平洋側の臨海部に工業地帯・工業地域が並ぶ地域のこと。
日本の工業地帯・工業地域について、地図でまとめてみましょう!
以下の図では、各地域の製造出荷額について、産業別の内訳を円グラフで表示しています。こうすることで、それぞれの地域が何の工業に強みをもつのか確認できます。


2023年データでは、三大工業地帯の製造出荷額はそれぞれ、京浜工業地帯が 27兆円、中京工業地帯が 70兆円、阪神工業地帯が 38兆円でした。日本全体の製造出荷額(373兆円)のうち、三大工業地帯が占める割合は 36% でした5。
京浜工業地帯は、東京都から神奈川県の川崎市・横浜市にまたがる範囲で発展した工業地帯です。かつては事業所数・従業員数・製造品出荷額など日本最大の工業地帯でしたが、現在では中京・阪神に逆転されて3位に転落しました。東京23区では精密機器の製造や、出版・印刷業が盛んです。
中京工業地帯は、愛知県から三重県北部にわたって広がる工業地帯です。日本最大の製造品出荷額をほこります! 中心となるのは自動車工業で、愛知県豊田市はトヨタ自動車の企業城下町として知られています。製造された自動車は名古屋港などから海外へ輸出されます。
阪神工業地帯は、大阪府・兵庫県に広がる工業地帯です。大阪市は古くから商業の中心であったため資本・労働力が豊富であり、淀川の用水も活かして発展してきました。日本製鉄などが多く工場を抱えており、データからも金属工業の割合が高い地域であることが分かります。
三大工業地帯以外にも、日本各地には大きな工業地域があります。例えば、東海工業地域では自動車の生産を中心に、浜松市や磐田市ではオートバイも生産されています(スズキ_浜松工場)。京葉工業地域は化学工業が盛んで、多くの石油コンビナートが立ち並びます(例:三井化学_市原工場)。



北海道工業地域・鹿島臨海工業地域・大分臨海工業地域など、地図に乗せなかった工業地域も存在します。興味のある人は調べてみてください!
工業・製造業のデータ:鉱工業指数・経済センサス・経済構造実態調査
この記事では、日本の工業の全体像をつかむために、経済産業省から公開されている【鉱工業指数】と【経済構造実態調査】のデータを利用しました。
【鉱工業指数】は、日本の鉱工業製品の生産・出荷・在庫などの動きを指数で表した統計です。現在は2020年を「100」として算出されており、工業生産が増えているのか、減っているのかを時系列で確認できます。製品ごとに単位が異なる工業生産を、まとめて比較しやすくするためのデータといえます。
一方、【経済構造実態調査】は、企業や事業所の経済活動を把握するための統計です6。製造業については「製造業事業所調査」として、事業所数、従業者数、製造品出荷額等などのデータを確認できます。この記事では、製造業全体の出荷額や従業者数、地域別・産業別の特徴を見るために、このデータを使いました。
このほかにも、品目ごとの生産量を詳しく確認できる【生産動態統計】など、日本の工業に関する統計データには様々な種類があります!
脚注
- 特に明記がない場合、この記事のデータ出典は次の統計です:鉱工業指数 [2020年基準・接続指数]、工業統計調査(従業員数4人以上)[2000, 2010, 2020]、経済構造実態調査[2024年]。経済構造実態調査では、個人営業の事業所は除くので注意してください。 ↩︎
- 鉱工業指数は「鉱業」と「工業」を合わせた指標ですが、「鉱業」は0.165%しか考慮されていないため、ほとんど「工業」のデータだと考えて問題ありません。<経済産業省リンク先:その他の鉱工業指数のデータ(ウェイト等)を参照> ↩︎
- データは米国運輸省から。:リンク ↩︎
- 製造業の労働者数は労働力調査などでも算出されますが、調査対象が異なるため数値がズレることに注意してください。 ↩︎
- 注意:このデータは、都道府県別のデータを集計したものであり、市区町村など狭義の工業地域を集計したものではありません。具体的には、京浜工業地帯:「東京都・神奈川県」、中京工業地帯:「愛知県・三重県」、阪神工業地帯:「大阪府・兵庫県」、北九州工業地帯:「福岡県」、瀬戸内工業地域:「岡山県・広島県・山口県・香川県・愛媛県」、関東内陸工業地域:「栃木県・群馬県・埼玉県」、東海工業地域:「静岡県」、北陸工業地域:「新潟県・富山県・石川県・福井県」、京葉工業地域:「千葉県」です。 ↩︎
- 経済構造実態調査は、5年に1度しか実施されない経済センサスに対し、空白期間の補完を行うために実施される調査です。「サービス産業動向調査「商業統計調査」「特定サービス産業実態調査」の3つの統計を統合・再編したものであり、2022年からは「工業統計調査」も統合して、その範囲をカバーしています。 ↩︎